男と女の「おかしな!?」ハナシ
無意識の言葉が上下関係に?

あなたの身の回りにも時々起こる
「これってどうなの?」「おかしくない?」という話。
このコーナーでは、毎回、「男と女のちょっとおかしな!?ハナシ」を、つぶやいてもらいます。
今回のつぶやき主は、50代のひろこさん。
中学校時代の同窓会で、パートナーの呼び方について話しています。
タロウ: 最近、ウチの女房がね、息子の大学受験のことでイライラしててさぁ。
ひろこ: ん? 今なんて? 女房? それって同級生のケイコちゃんのことだよね。
タロウ: そ、そうだけど・・・。
フミ: 今どき「女房」はないでしょう~。ケイコちゃん、課長さんになったって聞いたわよ。
タロウ: そうだけどさぁ、オレ、仕事の取引先に年配の人が多いから、何となくそんな言い方に慣れちゃってさ。
じゃあ君たちは結婚相手のことを人に何て言ってるの?

フミ: 私は夫婦でお店をしてるんだけど、「ウチの人」かな。
本人を知っている人には「ケンが・・・」って名前で言ったりしてる。
タロウ: 下の名前で呼ぶって、海外とかでは普通かもしれないけど、日本のビジネスの場では使いにくいよな。
ひろこ: 私は相手が誰だったとしても、「夫」って言ってるよ。
フミ: でもなんか「夫」とか「妻」って“意識高い系”って感じで堅くない?
ひろこ: でもそれが一番、シンプルでわたし的には使いやすいんだ。
ただ、訪問販売とかを断る時は、わざと「主人(・・)に聞かないとわからないので~」って言うけどね。
フミ: それ、私もあるある(笑)。
ひろこ: 普段は「主人」なんて絶対に言わないし、外で夫が私のことを「嫁が」とか「うちの奥さんが」なんて言ってるかも?って思うと、モヤモヤモヤ~だわ(笑)。
タロウ: なるほどね~、呼び名くらいでそんなことを思っている人もいるのか。
オレも今日、家に帰ってケイコに「何て呼ばれたい?」って聞いてみよっかな(笑)。
◆タロウのつぶやき
慣れすぎちゃって深く意味も考えずに使ってる普段の言葉の中にも、言われて気になる人がいるんだな。
「正直、いちいち面倒くさいことを言うなぁ」って気持ちもなかったわけじゃないけれど、教えてもらって良かった。
◆フミのつぶやき
昔、ケンが私のことを「うちの家内が・・・」ってお客さんに言っているのを聞いて、「なんでやねん」って思ったことがあったな(笑)。
二人で一緒に仕事をしているのに、何で私は「家の内」やねん!って(笑)。
◆ひろこのつぶやき
結婚した女性って、嫁、家内、奥さん、○○ちゃんママ・・・など、色んな呼び方をされるのよね。
どれも家とか役割とかがシレッとくっついた呼び方で、ずっと嫌だなぁって思っていたの。
「夫と妻」って、上下関係も家庭での役割も何にもなくてシンプルだし、公私ともに使えて、とっても楽になったと思ってる。
今日はあんな場でジェンダー絡みの発言をして、一瞬、場をしらけさせちゃったって感じたけれど、タロウもちょっとわかってくれたみたいで、まぁ良かったかな。
【ミニ知識】
~ 70代の妻は意外と先進的!? ~
あなたは、人前で配偶者のことをどう呼びますか?
2023年に、中日新聞がインターネット上で読者に尋ねたところ、年齢が高い層ほど自分の配偶者を「主人」「家内」と呼び、若い世代ほど「夫」「妻」といった中立的な呼び方をしているなど、年代で傾向が異なることが鮮明になりました。
また、「適切な呼び方が分からない」という意見もあったそうです。
興味深いのは、70代の妻は「夫」という呼び方を使っている割合が、60代・80代を抜いて高いということです。この世代の生まれ育ってきた時代背景なども調べてみると面白いかもしれません。
※中日新聞のンターネット上の読者アンケート「配偶者の呼び方」(回答 8389人)の結果より

弁護士で、不惑を越えてからの子育てに奮闘中の中村衣里さん
自分のパートナーのことを、他の人に対して、どう呼ぶのか、どのように表現するのか。
この一見何でもないようなことですが、たとえば「うちの主人が」と繰り返し言い続けることによって、これを聴く人に対してだけでなく、「うちの主人」と言われている当のパートナーに対しても、さらには「うちの主人」と言ってしまっている自分自身の意識にまでも、非常に大きな影響を与え続けてしまっているのではないでしょうか。
「主人」という言葉はそもそも、主従関係、上下関係の中にあって使われる言葉です。
それを多くの女性たちが、結婚をしたとたんに、いとも簡単にパートナーに対して使っている様子を見聞きします。
その逆、つまり男性が自分のパートナーに対して「主人」という言葉で言い表している様子を見ることはほぼ皆無であるにもかかわらずです(反対に男性たちは妻のことを「嫁」「家内」というように、家の所有物や一段下の存在であるかのように評価できる呼び方を使う様子をよく見かけます)。
なぜこのような呼び名が、こうも「普及」してしまっているのでしょうか。
これは約80年前に制度としてなくなったはずの「家制度」が綿々と人々の意識に、そして社会に生き続いてしまっているからでしょう。
いわゆる「家制度」では、「家長(家の主人)」たる男性を中心に家族員がそのもとに集い、男性が支配する側、女性たちが支配される側という構図がありました。
まさに男性を「主人」と呼ぶのがふさわしい仕組みだったといえます。
その家制度がなくなってからもう何世代か時が進んでいます。
それにもかかわらず、20代、30代の若い女性たちでさえ、結婚したとたんに自分のパートナーのことを「主人」と呼んでいる様子もよくみかけます。
私は仕事柄、離婚を希望する女性たちから相談を受けたり、代理人活動をすることが多いのですが、すでに別れを決断したり、離婚したくてたまらかったり、さらにいえば離婚をしてパートナーと赤の他人になった後でさえも、離婚したい相手である配偶者や、離婚した元の配偶者の男性を「うちの主人が」と呼んでいる場面を本当に良く見聞きするのです。
これは本当に不思議なことです。
無意識のうちに女性たちが男性を「主人」「上の人」と見てしまっている、評価してしまっているがゆえなのでしょうか。
仮にそのように思っていなくてもそうした言葉を使ってしまうことによって、自然に自分自身が、相手を格上の存在、自分がそれよりも下の存在という意識を持ってしまうでしょうし、配偶者にも自然のうちに「自分は上の存在だ」と意識させてしまうかもしれません(それが、支配の構造が見られる家庭内のDV(ドメスティックバイオレンスの温床にもなりかねません)。
また社会や組織の中でも、こうした呼び方が、「男性が上、女性が下」を当たり前ととらえてしまう人々の意識の醸成、維持に結びつく結果となってしまっていないかと感じます。
私自身はパートナーとは対等な関係であるべきと考えていましたから、「主人」等と呼ぼうとは思ったことがありませんし(私たち夫婦の場合は別氏を実践するための事実婚ですので、お互いに相手の苗字を使って呼んでいます。
たとえばパートナーは私のことを他人に対し「中村(なかむら)は・・」と呼んでいます。
苗字でパートナーを呼ぶって、意外に便利だと思われませんか?)、たとえば相談者さんに語り掛けるときにも、意識的に「夫さんは・・・ですか?」「パートナーさんは?」といった表現を使うようにしています。
この80年もの長い年月の間、多くの人が無意識のうちに「主人」という言葉を使い続けてしまった結果、現在も残るジェンダー不平等の社会構造、夫婦間の力の不均衡・権力関係につながってしまった、と言っても過言ではないくらいです。
やはり、私たち一人ひとりが、自分から、そして自分の周りから、「主人」という言葉を意識的に排していかなければ、自分も、家族も、そして社会・組織も、家父長的な考え方、男性支配的なジェンダー不平等からいつまでも脱却することはできないのではないでしょうか。
そして、私たちは自分自身が人生の主人公なのです。
自分の「主人」は、他でもない自分自身なのだということに改めて心に留めたいと思います。
普段の生活の中で、御自身のパートナーを示す言葉として「主人」という言葉を思わず使いそうになったとき、このことを即座に思い出してみられてはどうでしょうか。
少なくとも、なんとなく呼びやすいから、聞こえが良さそうだからという理由だけで「主人」という言葉を使うことを、明日からは止めてみませんか(そして「嫁」や「家内」という言葉ももちろん同じです)。
意識高い系なんて言われてもいい!御自分のパートナーについて、対等な関係を示す言葉で呼びかけてみませんか。
原稿担当 : NPO法人 あなたらしくをサポート(愛称:らしーく)
イラスト : 林やよい
※このイラストを利用されたい場合は「NPO法人あなたらしくをサポート」nporasiku@gmail.com までご連絡ください。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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