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Cute Movies

ルワンダの涙

監督:マイケル・ケイトン=ジョーンズ

C) BBC , UK Film Council and Egoli Tossell 2005
1月27日(土)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国順次公開
(C) BBC , UK Film Council and Egoli Tossell 2005
(C) BBC , UK Film Council and Egoli Tossell 2005
「100日で100万人が殺害された『ルワンダ虐殺事件』の真実」というパンフレットの衝撃的な見出しが、見終わった後にズシリと胸に残る。
国同士の戦争ではなかったからか、「そういえば、聞いたことがある」程度の認識だった。確かに国内の部族間抗争にすぎないが、事実は戦争以上に悲惨だった。ちなみに、この映画の翌日に『硫黄島からの手紙』を見たが、この映画の衝撃が強すぎて、日本兵の悲惨な末路にすら涙が出てこなかった。

1994年4月、アフリカのルワンダで、大統領の乗る航空機墜落をきっかけに、フツ族による少数部族ツチ族への大虐殺が開始された。フツ族とツチ族の分断は西欧諸国の殖民地支配が端緒になっていて、ツチ族への弾圧や虐殺は何十年にもわたり、繰り返されていたのだ。

ルワンダ共和国の首都キガリ。英国のカトリック教会のクリストファー神父(ジョン・ハート)が運営する公立技術専門学校に、多くのツチ族の避難民と白人の居住者が避難してきた。ここはベルギーの国連兵士が警備に当たっているからだ。学校のフェンスの外にはフツ族の民兵たちがどんどん集まり始める。

英語教師として赴任していた青年協力隊のイギリス人青年ジョー・コナー(ヒュー・ダンシー)は目の前に繰り広げられる事態が信じられない。正義感の強いジョーは今の状況を世界に知らせるべく、英国国営放送BBCの記者を連れてくる。その道中でジョーたちが見たのは凄惨な虐殺だった。

クリストファー神父はベルギー軍のデロン大尉に国連兵士の補強を進言するが、とりあってもらえない。BBCの記者もどうして虐殺を止めないのかと詰め寄るが、「命令に従うだけ」と答えるだけだった。その間にも、網の外ではまるで獲物を待つ猛獣たちのような過激派民兵たちが増え続けている。そんな中、国連軍の撤退命令が下りる。クリストファー神父、ジョーは大きな決断を迫られる・・・。

この映画は、虐殺を目の当たりにした元BBCC記者が白人の視点から制作した。命令がないと何もすることができない国連軍、つまり国連自体の問題も浮き彫りにしている。原題の『SHOOTING DOGS』は、“国連の命令”で衛生上の問題から死体を食べる野犬を殺そうとするデロン大尉に対して、精一杯の皮肉を言ったクリストファー神父の言葉からきているのだろう。

重い、重い映画である。でも決して目を背けてはいけない真実なのだ。
                   by 向日葵P



映画には、大きく言って、二つの役割がある。

一つは大衆を楽しませる事。そしてもう一つは何かを伝えて行く事。
そしてこの「ルワンダの涙」は後者の映画だ。これまで自分たちが知っているようで知らなかった出来事を、映画を通して認知することは少なくない。
ベトナムがあまりにも劇場型の戦争であったのに対し、カンボジアの内戦はあまり知られていなかった。そこでイギリス人製作者デビッド・パットナムは「キリング・フィールド」を製作。映画を通じ強烈なメッセージでカンボジアで起こった虐殺の悲劇を描ききった。世界は驚愕の真実を目の当たりにし、映画はオスカーノミネーションになるほどの素晴らしい作品となった。また911テロ事件を描いた「ユナイテッド93」「ワールドトレードセンター」そして硫黄島2部作など。そして世界が黙認したルワンダの大虐殺もまた、我々、(いや自分は)「ホテル・ルワンダ」という映画で知ったというのが本当のところ・・・。
こうした映画は我々に真実と、衝撃と常に真摯に伝えてきた。

そして又、後生に伝えなければ行けない真実がある、それがこの「ルワンダの涙」だ。

部族同志の争いはいつしか大殺戮を招く結果となったルワンダの大虐殺。
この映画には劇的な盛り上げは一切ない。あくまでも丁寧に真実を積みかなせていく。
ここには、シンドラーや、杉原千畝、またホテル・ルワンダの支配人のようなヒーローは誰一人登場しない。救いようのない悲劇の連続だ。
虐殺のシーンでは思わず目をそらし、目を覆いたくなる場面もある。
だがこの映画は言っている。
この真実に決して目をそらせない事・・・そしてこの真実を決して忘れないこと・・・。

お正月早々、地味で硬派な作品かもしれないが、多くの人々に見てもらいたい傑作だ。
text by...  茶柱達蔵

2006/01/26